■フッケバインがこちらを向く。
■彼女は笑っていた。
■大粒の涙をボロボロと流しながら、真紅の瞳を輝かせて、人懐っこい笑顔を浮かべていた。
「あは……」

【BWWWWN... BWWWWWWNNN...】
■先程とは打って変わって、ゆっくりとした足取りで……彼女は飛ばずに歩いている……電動ノコギリの唸り声が迫る。
■足を縫い付けられたように立ち尽くし、成すすべなくその挙動を目で追っているうちに、首筋にぴたりとノコギリの刃が当てられた。
「………?」
■くりっとした目でこちらを見上げ、フッケバインが首をかしげる。
■そしてギクリとしたように飛び跳ね、左腕のノコギリを元通り腕の中に引っ込めた。
「ちがう…ちがうよ……そんな、私、ちがう……!」
■さっきまでの笑顔と歌声は消え、青ざめた顔で震え出す。
■そして首を振りながら後ずさり、涙をこぼしながら喚き立てる。
「違うよマイスター!私は『悪い人間』以外を殺したりなんてしていない!!」
■そうして踵を返し、羽根を広げると、何処かへと飛び去っていった。

■呆然と通りを眺める。
■そこには、模造血液と機械油のマーブル模様の液溜まりをつくり、
■目を見開いたまま動かないベノムの姿があった…。

名前:“半分屑鉄の”ベノム
智識再構成率39%
話した言葉:記憶カラスのクリスマス128

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