「撃ったわね?私のマスターを撃ったわね?マスターのいる方向を撃ったわね?」
「「AIEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!」」
■アームが叩きつけられるたびに、甲高い音を立てながら装甲が引き裂かれ、フレームがひしゃげ、リベットが弾け飛び、中にいる人間が変形していく。
■各部の機関砲はすでに捻じ曲げられ、あるいはもぎ取られ、もはや火線を吐いているものは無い。
■ついに車内へとアームが突き込まれ、何かを掴み、そして握り潰したようだった。まだスピーカーから流れている軍歌に混ざり、びちゃ、と湿った音が通りに響く。

「おい、あれ止めなくていいのか」
■空になった発射器を放り出し、愛路を守るように仁王立ちしている獣耳の人形がつぶやいた。
■ちょうど、赤く染まった車内からベノムが「なにか」を引きずり出し、まだわずかに動いているそれを踵で蹴り砕いたところだった。

■ダメ押しのように蒸気機関が小爆発を起こし、赤く染まった残骸が濛々と黒煙を吹き上げる。
「終わりました。マスター。お怪我はありませんか」
■その虐殺の惨状を背後に、紫色の戦闘人形がスカートをつまみ上げながら優雅に微笑んだ。

「どうする?メロ」
「逃げよう。すぐに。今すぐに」

■遠くから響いてくるサイレンの音。
■女性と人形に手を引かれながら、凄惨な事件現場を足早に立ち去った。

名前:“半分屑鉄の”ベノム
智識再構成率39%
話した言葉:記憶捌の伍

高評価

お気に入り登録登録済み一覧

セーブデータ
新規登録・ログイン・マイページはこちら