「これは半ば推論ですが…"凶剣"はおそらく、"人形戦争"の一局面で、その技術情報を得たんです。
その根幹を成す設計図や製造手順書、そういったものを発見し、データベース内に取り込んだ。
そして、その反倫理的な内容と、人形に与えられている倫理観の間で齟齬をきたした…」

■言葉を切った明亜は目を伏せて伝票をつまみ上げた。
「その技術の復活を目論んでいる者達がいます。
これから勃発するであろう内戦に勝つために。あるいは諸外国からの干渉を退けるために。さらには、
…この『国』の中で主導権を握るために。」

「…実のところ、海螢…"ネプチューンシティ"の行政からは、憲兵隊の干渉は地方自治の理念に反すると突き上げを受けていましてね。
まあ先日貴方を巻き込んだ一件が大きいのですが……
我々は間もなくこの街から追い出されるでしょう。」
■そうしてわかりやすく嘆息して見せる。
「……重ねてお願いします。
もう、正統王朝に手を貸すのはやめてくださいませんか?」
■傾げた顔でそう頼まれる。芝居がかった挙動と裏腹に、その目はまっすぐにこちらを覗き込んでいる。

「お時間を取らせて申し訳ありませんでした。私はこれで失礼いたします。
……できれば、貴方とはゆっくり『うちの子かわいい語り』でもしたいものですね。
同じ、ドールが好きな者として」

■明亜はそう言い残して立ち上がり、手速く会計を済ませると振り返りもせずに店を出ていった。
■コーヒーはすっかり冷めきっていた。

名前:“半分屑鉄の”ベノム
智識再構成率39%
話した言葉:記憶_明亜の来訪陸

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