……残念、仕留め損なったわ。
「……一応聞きますけど、あの憲兵隊の人形のことですよね?」
■かがんだブラックウィドウの頭上数センチの位置に、ベノムのクローアームが突き刺さっている。
■攻撃の途中で強引に飛び退いた百式は、バラックの壁に刀を突き立てた状態で張り付き、こちらを窺っていた。
「周囲警戒を怠るからですよ、サンシタ。背後からの歌は聞こえませんでしたか?」
「ヌゥ、オヌシの妨害、確かに効いていたか…!」
マスターのお人好しに感謝しなさい、蜘蛛女。
「それはもう恩に着ますよ。覚えておいて下さい、私はとても義理堅い人形なんです」
■百式もベノムの加勢は想定していたのだろうが、行動に対しての認識を撹乱されていた。
■あくまでも不利を装うブラックウィドウの欺瞞と、絶対優位に立った所を衝くベノムの一撃。
■その策を間一髪で躱した百式はしかし、壁から降りてこない。
「……どうしたんでしょう」
……さあ?
『このおバカ!あれほど独断専行は慎めって言ったでしょうが!!
黒戸も聞いてますね!?帰ったら始末書書かせますから覚悟しなさい!!』
■……風に乗って聞こえてきた声は、無線からのものだろうか。
■百式は白目を剥きながら聞いていたが、
「決着は次に預けよう、さらば」
■それだけ言い残して風のように帰っていった。
……何だったの、あれ。
「……よりによって私に聞きます?」
名前:“半分屑鉄の”ベノム
智識再構成率39%
話した言葉:記憶_黒と金の交錯陸
高評価
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