■亜子の三輪貨物車は、見かけによらぬ速度で海上都市の街中を駆け抜けていく。
■土地勘は無いだろうに、運転には迷いがないようだった。複雑な街路をスイスイと進む。

『さて、一応貴女とその人形も、今はこちらの戦力にカウントして良いのかな』
■"アコニト"の声。計器盤の横に吊り下げられた携帯ラジオから発されている。
『貴女から見れば僕たちは不倶戴天の敵だ。共通の敵を得たからといって、やすやすと信じ合えるものかな』

《TEXT MESSAGE》
そいつを信用してはいけないよ。
国家憲兵隊が、僕達みたいな他国の工作員の活動を快く思っているはずがない。
それに協力している君のことも。
《TEXT MESSAGE》
■同時に、端末にメッセージを送ってきていた。無音のまま、画面を文章が流れていく。
■愛路の目はラジオの方に向いており、画面を見られてはいないようだ。

「えっとぉ…心配しなくても、私はあなたをどうこうする気ないし…
この街にいる間は、大っぴらに憲兵として活動するつもりはなくてぇ…」
『ふむ、でもあの人形を狙ってはいるわけだ』
「そうでもあるようで、そうでもないような……
事件を起こすなら、止めなくっちゃ…っては思うけどぉ」
■感情のない、淡々とした口調のアコニトに対し、愛路は困ったような顔で答える。

《TEXT MESSAGE》
腹の底で何を考えているか、わかったもんじゃない。
けれど、あのジャグワールという人形は戦力として有用だ。
上手く利用しつつ、"凶剣"は我々で確保する。
邪魔になるようであれば排除する。
こうなった以上、そういう方針で行きたいけど、異存はないかな?
《TEXT MESSAGE》

『…なら、一時休戦のうえ共闘、でいいだろうか。この一件が終わるまでは、互いに手出しはしない。
我々は立場は違うが、今だけは手を取り合うことができると』
「うん、うん。それでいいよ」
■愛路がぱっと笑顔を咲かせる。

《TEXT MESSAGE》
機を見てジャグワールに情報汚染を仕掛けておこう。
必要ならこの女のことも後ろから撃つ。
用意はこちらでするから、君は監視を頼むよ…
《TEXT MESSAGE》

『まずはうちのブラックウィドウを救出する。体制の立て直しだ』
■愛路がこちらを向き、微笑んだ。
「憲兵だって、今まで黙ってて、ごめんね。…共同作戦、頑張ろうね!
あの子を止めてあげなきゃ!」
■端末の画面に、メッセージはもう残っていなかった。

《To Be Continued...》

名前:“半分屑鉄の”ベノム
智識再構成率39%
話した言葉:記憶_MADANGEL_22

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