とうとう遠目に中庭が見えてきた。が、残念な事にそこには何もなかった。
そんな筈はない、あの明るさはおかしかった。そう思ったOは一気に中庭の中心にあるどでかく、そしてはげあがっているいちょうまで駆け寄る。そこからなら周りを見渡せるからだ。
しかし結局何もありはしなかった。
がっかりしたOはとぼとぼと出口の方へ向かい始める。

すると後ろの方で何か音がする。
それは最初ははっきりと聞こえなかったがだんだんハッキリと聞こえるようになってきた。
次第に辺りが明るくなる。

その正体を確かめるべく振り向いたOは唖然とする。

さっきまで何事もなかった周りの木々が燃えていたのだ。
そんな馬鹿な。此処には自分しか居なかったのに何故?何が原因でこうなっている?
そんな思考が頭の中を埋め尽くす。
あまりにも突然な出来事に硬直しているといきなり火の手は増した。
あっ、と声を漏らし周りを見てみると自分は火に囲まれていた。
見渡す限りの木々は燃え、草一つ残さない勢いであった。

逃げ場を失い焦るO。
するといちょうの木は被害が少ないように見える。
道はそれ以外はなく仕方なくいちょうの方に逃げるO。
動こうにも動けずじっとしているとだんだん火が近付いてくる。
もう駄目だ、どうしようもない。あまりもの熱さに意識もぼーっとし始める。
やがてゆっくりと火はOを包み込んでいく。そこでOの意識は途切れた。

怪談話5の続き