名前:星熊 勇儀

アルコール度数6:発泡純米酒レベル

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冷凍ミカンか…何年ぶりかな、もう随分食ってないな

おお、そうだ。お前さんに面白い話を聞かせてやろう
昔、そう大分昔だな…暑い暑い、暑くてうだるような夏至の日の話だ
その日、どうしても暑さに我慢できなくてな…天狗の夏みかんを持ってこっそり山を抜けて麓の湖まで涼みに来たのさ
で、湖に到着してすぐ目に入ったのが水場のそばでのびてる氷の妖精だ。無理もない、あたし達や天狗も我慢できない暑かったし、ましてや氷の妖精だからな

で、だ。いくら妖精だからってそんな場所にほっとくのは可哀そうだったし、体はヒンヤリ冷たかったから木陰に運んで涼んでたんだ
ミカン食いながら看てやってて、しばらく経って妖精が起きたから一個ミカンをくれてやったんだよ
その妖精、ミカンをじっと見つめて何をするかと思ったらそれを凍らせてあたしに投げ渡したんだ。妖精はそのままどこかにいっちまったが、今考えたら照れ隠しだったんだろうな

んでそのミカンなんだが見事に薄氷一枚で覆われてたんだ。皮をむいてみるとまたビックリ、ちゃんと中はキッチリ凍ってやがる
さっそく食べてみたらこれがもう美味くてなぁ…急いで山に帰って天狗と河童に食わせたのさ。すると奴らも美味さにビックリだ

そこからが笑い話だ。ひと月くらい経ってからあの河童と天狗がどうにかしてあの冷凍ミカンを作ろうとして試行錯誤をしてるってのを聞いたんだ
で、どうもミカンは凍るらしいんだが薄氷一枚の状態では凍らないらしくってね。皮がむきにくいって愚痴をこぼしてるんだ
だから「皮をむいで凍らしたらいいじゃないか」とあたしは言ったんだ。すると河童と天狗がすごい形相でこっち見てね、何かまずいこと言ったかと思ってヒヤっとしたよ
だがそうじゃなかった。どうもその河童と天狗は皮ごと凍らせるのに夢中で皮をむくっていうとこまで頭が回って無かったらしい
ホント、馬鹿っぽい話さ。…どうだ、面白かったか?





そういやあの河童と天狗、河城ってやつと射命丸ってえ奴だったような…

冷凍ミカン