名前:観月しおり&観月さおり

バカ犬の命がお嬢様に弄ばれた回数359回

幸せです、お嬢様…

ねぇ、バカ犬。
この子だれ?


い、いえ…その…
(な、何て説明すればいいのやら…)

貴女が、この魔導書の持ち主かしら?

………えぇ。
今は、ね。
あたしは、まともに使えないけど。


ちょっと、貸してもらえないかしら?

それは困るわね…。
見ず知らずの人に、祖先から受け継いできた本を簡単に貸すほど、あたしはお人好しじゃないわ。


私の名前は『アリス・マーガトロイド』。
魔法使いよ。


あたしは観月さおり。
この国を統べる女王よ。


これで見ず知らずじゃなくなったわね。
さぁ、貸してもらえないかしら?


………。
(あぁ…
何だか、殴り合いでも始まりそうな空気だよ…)

……何が目的なのかしら?
誰も知らない地下室に来て、あの本を貸してくれって言うなんて。


さっき言ったじゃない、私は魔法使いだって。
魔法使いが、異国…いいえ、異世界の魔導書に興味を示すことが変なことかしら?
きっと、私じゃなくて、白黒の魔法使いと遭遇してたら強奪されてたわよ?


随分と乱暴的でワガママなのね、貴女のいる世界は。
…クスッ。
でも、貴女のこと…そこまで嫌いにはなれそうにないわ。
異世界に殴り込みをかけて、他の愚かなスパイと違って、こっちに目をつけるなんて。
その冒険心、大いに結構だわ。


私も、偉大なる女王陛下様に褒めてもらって嬉しいわ。
きっと、こんな機会はもう死ぬまでないでしょうし。


いいわ、特別に読ませてあげるし、研究もさせてあげるわ。
少しの間だけ、この地下室にある部屋でゆっくりしていくといいわ。
でも、ママのほ…かおり様の本を読む前に、この本を読むことを命じるわ。
これは『ミルティアナ共和国史』といって、かおり様と、あたし達の国の歴史が書かれた本よ。
貴女が読もうとしてる本が、どう使われてるかも、ほんの少し書かれてるし、せっかくだから読んでおきなさいよ。


分かったわ。
ありがとうね、さおり。


クスッ…。
…あたしの名を、そう呼び捨てにして呼ぶなんて。
なんだか、新鮮ね。
バカ犬、貴方も少しは勉強したらどうかしら?


え…あ、はぃ…
(勉強ほど苦手なものはないのですが…)

せっかくの機会だから、アリスちゃんと一緒に、貴方も共和国史を読んでおきなさいよ?

は、はぁ…
(うぅ…文字は苦手なのにぃ…)

それじゃあ、アリスちゃん♪
何か必要なものとか、欲しい物とかあれば、このボタンを押せば可愛いメイドさんが届けにきてくれるわ♪


なんだか、悪いわね。

気にしないで。
それじゃあ、ごゆっくり~♪



は、はぁ…3b
あわわわ…!2b