「もう何度か、このドアを開けてるけど…
これだけは、どう頑張っても慣れないよ。
早く、掃除しなきゃだね…」
そう呟くと、れおな様は苦い顔をしながら、クリスティナちゃんへ渡す喇叭を探します。
「ガサゴソ…っと。
あ、あった♪」
それは、ラッパ手用の、ラッパ装備一式でした。
「さっそく、クリスティナちゃんに渡しに行かなきゃ」
れおな様は、飛び出すように倉庫から脱出すると、素早くドアを閉め、鍵をかけました。
そして、服についたホコリを簡単に払い落とし終わると、駆け足でクリスティナちゃんの家へと向かいました。
クリスティナちゃんは、この村によくありがちな、木製の小さな一戸建ての家に住んでいます。
年齢は二十代後半に見え、肌は白く、髪はブラウン色のセミロングで、目は青色。
背は高く、少しほっそりとした体格です。
大人しい上に、面倒見のいい人柄のため、みんなからは「お姉様」と呼ばれ、慕われています。
そんな彼女ですが、れおな様の突然の訪問には、とても驚いていました。
「まぁ!」と驚いてる彼女に、れおな様の天然な追撃が…ラッパ装備一式を渡されて、更にまたまた「まぁ!」と
声を上げることとなってしまったのです。
そして更に「おめでとう、クリスティナちゃん!
今日からラッパ手だよ!」
まさに、クリスティナちゃんにとっては、電撃的な出来事だったでしょう。
「あ、ありがとうございます、れおな様!」と言うのが、今のクリスティナちゃんに
とって出来る、最高の感謝の言葉でした。
しかし、天然道を突き進む、れおな様は
「違うよ、クリスティナちゃん♪
ほら、こうするんだよ」
と踵を合わせ、つま先六十度の直立不動の姿勢を取り、敬礼をしながら真正面でクリスティナちゃんをのぞみながら
「『ありがとうございます、同志れおな様』だよ♪」
と、お手本を見せました。
クリスティナちゃんは「は、はい!」と言い、れおな様のお手本通りに返答します。
「ありがとうございます、同志れおな様!」
胸も大きく、とても凛々しく美しい姿は、まさに「お姉様」の名に恥じぬ姿です。
れおな様は満足気に、その姿を見ると「明日からも、頑張ってね」と
一言残すと、かおり様の家へと向かいます。
去り際には、クリスティナちゃんから「はい!」と元気のいい声が聞こえました。
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