「ふぇぇ…大きい…」
なおみ様は、パン屋さんの前で呆然とします。
一体これは、何のお店なのか?
そもそも、この場所であっているのか?
そんな不安に襲われたのです。
店の前で立ち尽くしている見慣れない女の子を不思議に思ったのか、お店の人が中から出てきました。
とても若い…というよりも、見た目だけで判断すると、幼い少女のようで、髪はブロンドのショート、ほっそりと
した白い肌を覆うように、真っ白なパン屋さんの制服を着こなしています。
彼女は緑色の可愛らしい瞳をパチクリさせながら、なおみ様に話しかけます。
「えっと…どうかなされましたか、お客様?」
「う、うん。
ねぇ、えっと…」
なおみ様は、ヘレナちゃんって子はいるかな?と聞きたかったのですが、なぜか言葉に出ませんでした。
「…?
今日のオススメのメニューですか?」
ニッコリとしながら、この幼い店員さんは、店の中へと案内をしようとしています。
なおみ様は慌てました。
「ち、違うよ!
なおみはね、ヘレナって子に会いに来たんだよ!」
あろうことか、店の前で、それも不審者バリバリの状況下で、自分の任務を言ってしまいました。
幼い店員さんはニッコリと微笑んで、なおみ様に返事をします。
「あら、私に何か御用ですか?」
スェーチェのパン屋さん、朝の十時。
後に、ミルティアナ共和国内務省国家安全保障隊を設立する英雄が、姿を現した瞬間でした。
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