なおみ様は、言われた通りにヘレナちゃんの後を追うように降りていきます。
梯子の長さは、それ程までは長くなく、割とすぐに地下にある空間へと到着しました。
地上で明かりをつける道具を装備していたヘレナちゃんは、手探りでロウソクを取り出すと、マッチで火をつけます。
辺りは広々とした空間に、書類と本、そして武器と会議に使っているのであろう机と椅子が置かれていました。
しかし、なおみ様はそれよりも、ロウソクの火の明かりで見えるヘレナちゃんが、より美しく、綺麗に見える
ことに気づき、少し胸がドキドキしていました。
ヘレナちゃんは、そんなことは気にもせずに、椅子に腰をかけます。
「話は、なんでしょうか?」
なおみ様も、同じように椅子に座り、いよいよ本題へと入ります。
机の上には、辺りを照らすためのロウソクの火がゆらゆらと揺れています。
「かおりちゃんがね、ブゼムラティックに帰ってきたの。
それでね…」
なおみ様は、先日の会議の内容と、今義勇兵が必要になっていることを伝えました。
ヘレナちゃんはピクリと驚いたような表情へと、一瞬だけ変わりましたが、すぐさま元の表情へと戻ります。
「本当…ですか?」
ヘレナちゃんは、確認をします。
「うん、本当だよ」
なおみ様は、かおり様から預かっている証明書をそっと渡します。
かおり様の署名が入った証明書を受け取ると、ヘレナちゃんは小さな虫眼鏡を使い、本物の証明書か
どうかを確認しました。
「………本物ね」
ヘレナちゃんは、虫眼鏡を置きます。
「…疑ってごめんなさい。
いよいよ、はじめるのですね」
感慨深そうに、そして、覚悟を決めた表情で、ヘレナちゃんは言いました。
「うん、そうだよ」
なおみ様も、いつの間にかヘレナちゃんと同じ表情になっていました。
ヘレナちゃんは椅子から立ち上がると、部屋をぐるりと見渡して、こう言いました。
「必要なものは何でしょうか?」
なおみ様はこう返します。
「全て、だよ」
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