「チェコ社会民主党への攻撃…?」
「はい、チェコ社会民主党への攻撃です。
何も、攻撃と言っても武力で抑えつけるという訳ではありません。
今のチェコ社会民主党の体たらくは知ってますよね?」
「う、うん、知ってるけど…?
…もしかして、ヘレナちゃん」
当時のチェコ社会民主党は、内部で穏健派の右派と女王主義の本質を守る左派で派閥が生まれていました。
ヘレナちゃんは、この左派を取り込もうと考えたのです。
「そう、その『もしかして』です。
チェコ社会民主党は、もう死んでいます。
その死体とともに同志が心中しないよう、救い上げるのです。
…しばらくの間は、少し汚れ仕事をしてもらいますけどね」
なおみ様は、本当にそんなことが可能なのだろうかと思いました。
そのことが表情に出ていたのでしょう。
ヘレナちゃんは、なおみ様に話を続けます。
「大丈夫です、なおみ様。
すでに内通者が内部に潜入済みです。
当然、こちらも幾許かの『お礼』をしなければいけませんが、大したことではありません。
後は、かおり様の許可が下りれば、すぐにでも工作活動を開始します。
同志たちは、私たちの救助を待っているのです」
『同志たちは、私たちの救助を待っている』との言葉に、なおみ様の腹積もりは決まりました。
「分かったよ、ヘレナちゃん。
かおりちゃんを説得してみるよ。
ただ、ヘレナちゃん…」
なおみ様は、一つだけ条件を付けました。
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