「へ、ヘレナちゃん!」
顔を真っ青にしながら、れおな様はヘレナ様を止めます。
なおみ様も、ワンテンポ遅れながら到着しました。
「どうしてですか、れおな様?」
ヘレナ様はムッとした表情で振り返ります。
「殺しちゃダメだよ、ヘレナちゃん」
少女は縋るような目で、れおな様を見ています。
れおな様はゆっくり歩きながら、ヘレナ様と向き合いました。
「この子はね、れおなを本気で殺そうとしてた訳じゃないんだよ?
れおな達が少し抜けてたから、からかってただけだよ」
れおな様は、サラリと言いました。
しかし、ヘレナ様は納得いきません。
「それは、れおな様が舐められていたということではないですか。
れおな様に対し、銃口を向けることが何を意味するのかを、今ここで教えなくてはいけません。
…それに、本来ならこの作業は、れおな様自身が行うべきなのですよ?」
銃口を少女に向けたまま、ヘレナ様は反論しました。
「なおみも、どちらかというと、ヘレナちゃんに賛成かな…」
少し迷いながらも、なおみ様はヘレナ様に同意します。
「それでも、ダメなものはダメなの。
れおなの言う事、聞けないの?」
豹変、そして冷たい目線。
なおみ様とヘレナ様は、この目を知っています。
こうなってしまっては、もう、れおな様に対し反論をすることが出来ません。
二人のお嬢様が黙認したところを確認すると、れおな様は黙って少女を抱き起こします。
「もう、大丈夫だからね」
少女は大きな声で泣きじゃくります。
そして「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度も、何度も言いました。
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