ヘレナ様は、一呼吸置いて話を続けます。
「ですが、このチェコ社会民主党内部への工作活動は確実に成果を上げ続けています。
もう既に、議員や後援組織、党員の中から黒色の薔薇戦線へと秘密裏に参加してくれている者が多く出てきています。
まだ過半数という情勢ではありませんが、このまま行けばチェコ社会民主党を私たちの思い通りに動かせるようになる日も、そう遠くはありません」
かおり様は、この報告をとても喜びました。
「とてもいい話だわ。
…素晴らしいの一言に尽きるわね。
その調子で、しっかりと頑張りなさいよ」
次は、ヘレナ様たちが喜びます。
「はい、かおり様。
私どもにお任せ下さいませ」
かおり様は席を立ち、会議を終わらせます。
地上階へと出る前に、ヘレナ様の方へと振り返り、こう言いました。
「…ところで、ヘレナちゃん」
あまりにも突然のことだったので、ヘレナ様は驚きます。
「ど、どうかなされましたか、かおり様?」
かおり様は、先程までの疲れた顔から一変して、ニッコリとしながら言います。
「パンのお持ち帰りは出来るかしら?」
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