「あぁ、早くなんとか……
ん…?」
ヴィェラ様は、更に奥の路地裏で、一人の女学生が複数の悪いオス犬(西側の用語で『男性』と呼ばれている存在)に絡まれていることに気づきます。
どうやら悪いオス犬たちは、女学生が大事そうに抱えている学生鞄を奪おうとしているようで、いつ暴力を振るい出しても
おかしくない状況です。
「おい、マルタ!
あれ見ろ!」
ヴィェラ様は、マルタ様に現場を指さして言います。
「絡まれてるみたいね…
行きましょ!」
二人は頷くと、現場に向けて駆け出します。
「時間がねぇんだ、早く出せよ。
痛い目に遭わすぞ?」
ヴィェラ様たちが現場に到着する頃には、痺れを切らせたオス犬が刃物を取り出し、いよいよ女学生の身に危機が迫っている状態でした。
「てめぇら!
何してやがる!?」
ヴィェラ様が叫びます。
悪いオス犬たちは、二人のお嬢様の姿に気づくと顔をそちらに向けて、少し驚いた顔をしました。
しかし、すぐにニヤリと気味の悪い表情へと代わります。
「なんだてめぇ?
やんのかよ?」
悪いオス犬たちのリーダー格の一匹が、刃物をこれ見よがしに持ちながら歩き出し、ヴィェラ様の方へと近寄ってきます。
しかし、ヴィェラ様は動じません。
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