「なんだ、おまえ?
刃物がないと戦えないのか?」
ヴィェラ様は悪いオス犬を挑発します。
「っだと、てめぇ!」
悪いオス犬のリーダーは、刃物を突き出しながらヴィェラ様に跳びかかってきました。
「…………!」
この瞬間、ヴィェラ様は勝利を確信しました。
悪いオス犬の刃物を持った腕の手首を掴むと、上手に身を反らして左足をあげ、腰へと一撃を食らわせました。
あっという間のことでした。
一撃を食らった悪いオス犬は、バタリと倒れます。
この時点では彼はまだ意識はあったのですが、マルタ様が汚物を見るような目で、この悪いオス犬を見下しています。
つまり、無言の内に行われる、死刑宣告です。
彼は慌てて立ち上がろうとしますが、無駄でした。
ドスンと力一杯に背中を踏まれ、彼の意識は吹き飛びます。
「や、やべぇ!」
残りの悪いオス犬たちは、リーダーを置いて必死で逃げていきました。
「さすがマルタだな。
あまりの重さに、泡吹いて気絶しちまってるぜ」
ヴィェラ様は、動かなくなったオス犬を足で軽く蹴りながら言います。
「違うわよ、ヴィェラ!
踏み方にも、ちゃんとコツがいるのよ」
マルタ様は、ムッとしながら言いました。
「へへっ!
冗談だよ、冗談。
そんなことよりも…」
ヴィェラ様は向きを変えて、絡まれていた女学生に話しかけます。
「どうして絡まれていたんだい、お嬢さん?」
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