名前:観月しおり&観月さおり

バカ犬の命がお嬢様に弄ばれた回数359回

幸せです、お嬢様…

「長い時間と研究を重ねて作り上げられて完成した、この本が、かおりお嬢様を勝利へと導いてくれることでしょう」
かおりお嬢様は、怒りで手が震え始めます。
「……貴女は、あたしを馬鹿にしているのかしら?」
村長は驚いた表情をしながら、必死で否定します。
そして、この魔術書の有用性を語り始めますが、かおり様はその言語に耳を傾けません。
「馬鹿にしてるわ。
あたしを支えたいのなら、こんな本じゃなくて、新しい政治学書と新技術に関する本を持ってくることね。
もっとも、その前に痴呆を直すことが先かもしれないけれどね」
かおり様は、感情に任せて本を薙ぎ払い、床へと落下させます。
そして、無言で椅子を弾くように席を立ち、村長を振り返ることもなくドアに手をかけました。
後ろからは、村長のすすり泣く声が微かに聞こえましたが、特に何も気にすることなく、廊下へと出ると、肩を震わせながら
立っている、あの青年の姿がありました。
かおり様の怒りは、まだ静まっておりません。
怯える青年の頬へビンタを見舞うと、そのまま館の出口へと進みます。
しかし、出口へ向かう廊下の窓から外を見ると、先程までの快晴は影もなく、雨がシトシトと降り始めていました。


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