「いてて…
此処はどこだろう?」
周りを見渡すと、そこは見慣れた場所『さおり様のお部屋』でした。
「オス犬…?
どうしてこんな場所にいるのかしら?」普段着のさおり様が、こちらを不思議に見ています。
どうも、こっちの世界では少し事情が違うようです。
「どうも、さおり様…」
「
どうも、じゃないわよ…。
どうして、オス犬がココにいるのよ?
それに、今はそれどころじゃないのよ。
あちらこちらで、バカなクソ犬どもが反乱を起こして、手が付けられなくなってるわ」
「
このオス犬は、きっと別世界から来たのね。
そうでしょ、クズ犬さん?」
「は、はぃ、かおり様…
僕は別世界の、かおり様から命を受け、ここにやってきました」
いつの間にか、僕の後ろには見慣れた姿…かおり様がいました。
「
…なんとなく分かるわ。
でも、きっと提案したのは、さおりちゃんでしょうね。
すぐに何でも首を突っ込みたがるし」
かおり様は、ちょっと複雑そうな表情をしながら、さおり様に言いました。
「
それって、どういうことなのよ、ママ?」
さおり様は、少し不満そうに返します。
「
んふふ…♪
そんなことよりも、さおりちゃん。
オス犬を扱ったこと、確か一度も無かったわよね?」
なんということでしょう、この世界では僕は生きていないようです。
もしかすると、かおり様が僕のことをすぐに察してくれたところからみて、僕はお嬢様方の出産の際に、何らかの理由で完全に死亡してしまっているのかもしれません。
「
せっかくの機会だし、このオス犬を飼うように命じるわ。
暫くすると、元の世界に帰っちゃうかもしれないけど…
せめて、その間だけでも、オス犬と触れ合うっていう経験をしておくのも悪くないわよ?」
かおり様は、僕を飼うという提案を、さおり様にしました。
さおり様はとても不満そうです。
「
オス犬なんて、ただの食べ物じゃない。
ママはそういって、すぐにオス犬を甘やかすから…」
「
オス犬にも、いいオス犬がいるのよ?
ママは、少なくともそういうオス犬が一匹はいた…
ううん、一匹はいるということを良く知ってるわ」
かおり様は、僕をチラリと見ながら、そう言いました。
「
ママのその話は、何度も聞いたわ」
さおり様は、やはり不機嫌そうに返します。
「
とにかく、ちょっとした儀式をはじめるわ。
さおりちゃん、靴下を脱いで」
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