1910年5月24日(火曜日)
かおり様は、幼い頃の夢を見ていました。
その夢は、まだ物心がつくかどうかの、非常にきわどいときの自分で、かおり様の母親との
懐かしい会話を再現したものでした。
夢のなかで、かおり様は懐かしい言葉を耳にするのでした。
「あの本があればねぇ…
かおりも、もっと長生きが出来て、もっと強くなれるのに…
…ごめんね、かおり」
かおり様は、キョトンとした幼い目で、こう訪ねます。
「あの本って、どんな本なの?」
「ママと…そのご先祖さんが、故郷に置き忘れた本だよ。
…さぁ、おいで、かおり。
新しい洋服よ」
夢は、ここで終わりました。
とても短い夢でしたが、かおり様に大切なことを思い出させるのには、十分すぎる内容です。
目が覚め、窓から外を覗きます。
どうやら、まだ日が昇るまでには、かなりの時間があるようです。
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