1910年5月29日(日曜日)
朝。
かおり様はベットから目を覚まして、家の外が騒々しいことに気が付きました。
「何よ、もう…」
少し不機嫌そうに、かおり様はパジャマのまま窓際へと向かいます。
ついでに、スヤスヤとまだ眠っているクズ犬を蹴り飛ばして起こしました。
「ひぃっ!?
か、かおり様…!」
「家の外が騒々しいわ…
…もしかしたら、れおなちゃんかしら!」
本来ならば、かおり様と一緒に、れおな様も同じ便の船でベネチアへと向かう予定だったのです。
ところが、れおな様はとてもマイペースなお嬢様だったので、ついついお寝坊をしてしまい、待ち合わせの時間に到着することができなかったのでした。
このお寝坊癖は、かおり様と、れおな様が知り合ったとき…
つまり、かおり様の物心がついたときからの癖で、いつでも、どんな約束のときでも、ほぼ間違いなくと言っていいくらいの
確率で発生し、約束の時間というものに間に合ったことが一度もなかったのです。
今回の約束もまた、例外ではなかったのでした。
かおり様は、パジャマのまま外へと飛び出します。
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