1910年6月12日(日曜日)
「遅いわねぇ…」
ブゼムラティックの正午。
かおり様は、なおみ様の帰還を首を長くして待っています。
予定なら、もうブゼムラティックに帰ってきててもおかしくはないからです。
「どこで道草食ってるのかしら」
そう言いながら、かおり様は足元にいるクズ犬をグリグリとブーツを履いたおみ足で踏みつけます。
「はぅ…はぅ!」と、足元から気持よさそうな声が聞こえてきます。
かおり様は大して気にも止めずに、事務を続けます。
すると、噂をすればなんとやら、なおみ様の元気な声が聞こえてきました。
「かおりちゃーん!」
「やっと帰ってきたみたいね」と、かおり様は玄関へと目を向けます。
すると、扉を勢いよく開けて駆けこんでくる、なおみ様の姿が見えました。
「おまたせー!」
次のページヘ52b