1910年6月6日(月曜日)
ブゼムラティック、夕方。
先に出発した、なおみ様と入れ替わるように、スェーチェから来る義勇先遣隊が到着しました。
訓練がなされていないという話でしたが、みな整然としたる行進をもって到着を果たし、出迎えた観月かおり様に
向かい、現地到着の報告をきっちりと行いました。
「『マリア・クリーマ』以下、15名!
ただいま到着しました!」
隊員全員が、綺麗に敬礼を行います。
この練度を見て、かおり様は「しっかりと訓練を行っておいて良かったわ」と思いました。
もし、訓練を実施していなければ、落差が生じて兵士たちの士気は良くない方向へと進んでいたことでしょう。
「ご苦労様。
…シャールカちゃん!」
かおり様は、ニッコリと微笑んで先遣隊を迎えると、シャールカちゃんを呼びます。
このシャールカちゃんは、村の中でも特に活発な女の子で、訓練兵の中で纏め役に位置するポジションにいます。
性格はボーイッシュな女の子で、短髪のブロンド、歳はとても若くて無駄のない鍛えられた体格をしています。
しかし、筋骨たくましい姿をしている訳ではなく、外からみると、とても可愛らしいボーイッシュな女の子にしか見えないのです。
今れおな様を呼ばずに、このシャールカちゃんを呼んだのは、将来この子たちも纏める役目を負うであろうことを、かおり様が見越してのことでした。
そのために、この先遣隊に誰が訓練兵の間でのリーダーなのかということと、シャールカちゃんに「この子たちを纏めるんだよ」という
ことを暗に認識させる必要があったのです。
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