1910年9月2日(金曜日)
ブゼムラティック、昼。
かおり様は昼食後、一杯のコーヒーを飲みながら考え事をしていました。
「フォアヴェルツに書かれたミラちゃんの論文を読んだけど…」
フォアヴェルツとはドイツ社会民主党の機関紙です。
それゆえに、かおり様の手元に届くには幾日かのラグが生じてしまっています。
先ほど、かおり様のお言葉の中で出ていたミラ・トロツキー様とは、トロツキー派と呼ばれる
勢力を構築していて、ロシア社会民主党(ロシア社会民主労働党とも呼びますが、以下『ロシア社会民主党』で呼称を統一しています)と呼ばれる
女王主義政党内の一致団結と派閥抗争反対、組織内統一を呼びかけています。
かおり様が先ほど読んでいたフォアヴェルツに書かれた論文も、そういった内容でした。
「悩むわねぇ…
内部対立は収まりそうにないし…メンシェヴィキか…ボリシェヴィキか…
…あたし達と、上手にやっていけそうなのは、どちらかしら?」
気持ちの上では、ボリシェヴィキ派と手を組みたいと思っていました。
革命を実行に移す方法として、メンシェヴィキ派は直接的に人民を導こうとは考えておらず、一方のボリシェヴィキ派は人民を職業革命家が
的確に導くというスタンスを取っていたからです。
これは、今まさに黒色の薔薇戦線が観月かおり様を中心として、多くの人民を偉大なる革命へと導こうと
手腕を振るっている行動思想と一致しているからです。
「…接触するなら、ボリシェヴィキ派かしら」
かおり様は、ぼんやりとした感じではありましたが『もしも』に備え、一応の方針は固めました。
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