晴絵
私は4歳の頃、突然原因不明の高熱に倒れ、生死の境をさまよったことがあった。

私の母親は大雪の夜、高熱でうなされる私を車に乗せて病院へ急いだが、車輪が雪にとられて一向に進まなくなってしまった…。

そのとき、立ち往生する私の母親の車のもとに学ランを着たリーゼントヘアの少年が現れた。
夜道が暗くて少年の顔はよく見えなかったが、少年の顔には青アザや切り傷があり、今殴り合いをしてきたとでもいうような風貌だった。

とっさに警戒した私の母親だが、少年は車に高熱を出している子どもが乗っていることを察すると、着ていた学ランを脱ぎ、後輪の下へ敷いて車を押し始めたのだ。
高熱にうなされながら、私は車を押す少年のリーゼントヘアを見ていた。

4歳の私にとって、その少年はあこがれのヒーローとなった。
どこの誰かはわからないその少年にあこがれ、私は少年と同じ髪型であるリーゼントヘアにしている。

だからこそ、私は髪型をけなされると、自分にとってのヒーローであるリーゼントの少年をけなされていると感じ、激しく怒るのだ。






穏乃
全然髪型違うじゃん…


バカ!
しーっ!




君のそのヘアスタイル笑っちまうぞ、晴絵ェッ! 20〜30年前の古くさいセンスなんじゃあないのォ〜〜〜!! カッコイイと思ってんのかよォ〜〜〜


晴絵の髪ってどうなってるんだ?