名前:アーサー

スコーンの数172個目

撫でる!

(ざあざあと雨が屋根を打ち付ける。
そっと空を見上げると、真っ黒な雲。今日は一日、梅雨の合間の晴れ間で雨は降らないと言っていたキャスターに内心悪態をつく。
ついさっきまで晴れていたのに、あっという間に雲が広がってこの有様だ。恐らく通り雨だろうから、そう長くは降らないだろうけど。)

(……でも、久しぶりの、で……デート、だったから。
無駄に気合を入れたスーツと、ぴかぴかの革靴が無駄になってしまった。髪だって今日はしっかりとセット出来たのに。)


(○○とふたり、慌ててシャッターの下りた店の軒先を借りて雨宿りをする。
これだけ雨に濡れてしまったら、このあとの予定は全てキャンセルだな……。はあ、と溜息をつきながら○○を見て、そしてすぐ視線を逸らした。
スーツのジャケットを脱いで、其方を見ない様に○○に差し出す。幸い、中まで水はしみていない。)
(ジャケットを押し付けられて不思議そうにしていた○○だったが、自らの姿を見て漸く意味に気付いたのか、慌てて俺のジャケットを羽織り、前のボタンもしっかりと閉めた。)


(……今だけは。今だけは、このびちゃびちゃに濡れて俺の頭を冷やしてくれる髪の毛に感謝した。
ぴ、ぴんく。ぴんくだった。モロに見てしまった。
考えると熱くなってくる。ごほん、と咳払いをして、必死に邪念を払う。)


へ、変なもの見せてごめん……暫く借りるね…。