名前:アーサー

スコーンの数172個目

撫でる!

(12月も半ば。
日本に来て何度目かのクリスマスを迎えようとしているが、相変わらず一人寂しく俺は今日も深夜まで残業をし、コンビニで弁当と酒を買い、極寒の寒さの中、マフラーに顔を埋めながら足早に家へと向かっていた。

いつもは疲れで重い足も、今日だけは軽い。
連続した残業も今日でお終いだ。明日は待ちに待った週末。早朝出勤終電帰宅を繰り返し疲れた体をひたすらに休ませよう。

昨日までは鬱陶しく感じていた街に流れるクリスマスソングも、イルミネーションも、寄り添って歩く恋人たちだって今の俺は穏やかに微笑みながら見守ることが出来る。
ははは、休み最高だぜ!

しかし、今日は凄く寒い。着古したコートじゃ寒さを防ぎ切れない。ボーナスも入ったし、新しいものを買いに行くか……)

(近道であるホテル街を通る。
そういや、最近は忙し過ぎて抜いてねえな…帰ったら久々に抜くかな。この間買ったAVまだ見てねえし。今日は夜更かししても全く問題ねえしな!完徹しちまってもいいくらいだぜ!ははは!)


(そんなことを考えながら歩いていると、あるホテルの前で男女が言い争いをしているのに気付く。なんだ、痴話喧嘩か?と思わず立ち止まってカップルらしき二人を見てぎょっと驚く。カップルの女が、所謂ベビードールのような、フリフリのスケスケの格好だったからだ。
12月半ばの!深夜の!コート着ててもクソ寒い中で、だ!なんのプレイだよ!?彼氏は何を考えてやがる!?

二人の会話を盗み聞きする。…どうやら、ベビードールの彼女がホテルに入るのを嫌がっているらしい。
まあ、その程度の痴話喧嘩ならこのホテル街よくある風景でもある、が。)


(あの彼女は、どうやら本気で嫌がっているようだ。
ごめんなさい、勘弁して下さい、と泣き喚く彼女を、男は怒鳴りつけながら腕を掴み無理矢理中へ連れて行こうとしている。
おいおい…たとえ恋人同士だろうと、それはよくねえぞ。パートナーであろうと夫婦であろうと、同意無しのセックスは強姦だ。…というかそもそも、あの二人は恋人同士なのか?彼女の服装はまあとりあえず置いといて…警察とか呼んだ方がいいんじゃねえか?
そう思う程の嫌がりっぷりなのだ。

周りを見渡す。深夜という時間帯のせいであのカップル以外、通行人は俺一人。)


(…………。)