名前:アーサー

スコーンの数172個目

撫でる!

(声を掛けてきた男性に連れられるまま、ホテル街を歩くと、なんとなく懐かしく感じた。そういえばアーサーと出会ったのもホテル街だったな。)

(「……私、ここがいいです」)

(立ち止まったのは、まさしくそのホテル。直前で怖気付いて泣く私を、アーサーは声をかけて助けてくれたんだったっけ。
私の手を握る男性は嬉々としてホテルの中へと進んで行く。私は思わず立ち止まってしまった。ーーやっぱり怖い。そう思って、足が進まなくなってしまった。)

「どうしたの?」


(そう問いかける男性の声に、大丈夫です、と答えようとしたけど、言葉が喉に詰まってしまった。握られた手が気持ち悪い。今すぐ振り払って逃げてしまいたい。でもここで逃げたら、また振り出しに戻ってしまう。ーー大丈夫。部屋に入ったら、魔術を使ってさっさとやる事だけやって魂を奪って帰ればいいんだから。大丈夫。)

(小さく首を横に振って、一歩歩みを進めた。)