俺には、兄ちゃんと、姉ちゃんがいる。
二人とも優しくて、(兄ちゃんはすぐ怒るけど…)
頭が良くって、(兄ちゃんはすぐ変な事思い付いて皆に迷惑掛けたりするけど…)
俺の大好きな、自慢の兄弟なんだ。
姉ちゃんは俺の姉だけど、国として存在してる訳ではなく、俺の一部分として現れた、俺の化身のようなもの。
……生まれ順的には姉ちゃんは俺の妹なのかもしれないけれど、俺よりずっとしっかり者でいつも俺の手を引いてくれたあの子は、誰がなんと言おうと、俺のお姉ちゃんなんだ。
姉ちゃんは少し不安定な存在だったけれど、いつもにこにこしていて、俺よりもずっと元気で。あの頃は、姉ちゃんがいなくなってしまうかも、なんてことは頭の片隅にも思ってなかった。
──分裂していた俺と兄ちゃんが統一した、1861年3月17日。
あの日、姉ちゃんは俺の体の一部となって消えてしまうんだ、と、誰に何かを言われるでもなく俺は感じていた。
嫌だって思ったけれど、俺達がどうこうできる事ではない。あの日は一晩中、姉ちゃんの手を握りしめて泣きながら眠ったっけ。
──それでも、姉ちゃんは消えなかった。
泣き虫な俺を置いて消えれるはずがないでしょう、と、真っ赤に腫れた俺の目元を優しく撫でた。
あの日以来ずっと、姉ちゃんは俺たち兄弟のそばに居てくれている。
もう、いなくなることなんか無いんだろうと思っていた。亡国であるギルベルトだって今もルートのそばに居るし、なら姉ちゃんだって、少なくとも本体である俺が消えたりしない限り、有り続けるだろうと思っていた。
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