俺たちの記念日である、3月17日がもうすぐやってくる。そんなある日。
俺はおかしな夢を見るようになった。姉ちゃんが、消えてしまう夢。
記念日のパーティで、俺の隣に座っていた筈の姉ちゃんがいつの間にかいなくなっていて、俺は姉ちゃんを探しに会場を走り回るんだけど、見つけられなくて。
最後、会場の出口に立つ姉ちゃんを見つけて、手を伸ばした瞬間に、泡のように消えてしまう。
俺は慌てて兄ちゃんに駆け寄って、姉ちゃんが消えてしまったと訴えるんだけど、兄ちゃんはそんな俺を見て不思議そうに言うんだ。
「──何言ってんだ。俺たちには姉も、妹もいねえだろ?」
……その言葉と同時に、俺は夢から目覚める。
はじめてその夢を見た日は怖くなって、夜中だったのに姉ちゃんの部屋に駆け込んだ。
穏やかに眠る姉ちゃんの胸に耳を当てて、静かに鳴る鼓動の音を聞いて、ひどく安堵して。同時に、不安になった。
…大丈夫。きっと大丈夫。一番最初に、姉ちゃんが消えてしまうかもと感じた時だって、姉ちゃんは消えなかった。
ただ、3月17日が近付いて来てるから、その時のことを思い出して不安になっているだけ。
きっとそうだ。……そうであって欲しい。眠る姉ちゃんの手をぎゅう、と強く握った。
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