(地下の牢屋への扉を開いて、……私は固まった。
いつも鉄格子の中にいるアーサーが、扉を開けてすぐ、目の前にいたからだ。)
よお。…待ってた。
(驚きの余り固まる私の腕を掴み、室内へ引きずり込まれた。食事の乗ったトレイを落としそうになるが、なんとか堪える。
バタン、と地下室の扉が閉まる。私の頭の中の危険を知らせるブザーが一気に鳴るけど、現実を逃避するように、ぼんやりとトレイに乗ったカップを見て、スープが少しこぼれてしまったなあ、なんて思っていた。)
ごめんな。びっくりしたよな。
食事、サンキュ。……でも今はいらねえや。貸してくれ。
(私からトレイを受け取り、テーブルの上に置く。)
………そろそろだ、と思ってな。
何がって?
魔法の事だよ。そろそろ効力が切れちまう。
俺のこの魔法は、眠る事がトリガーとなって発動するんだ。つまり、今日。お前が眠ったら、元の世界に戻っちまう。
(つまり、帰れる!ぱあっと表情が明るくなった私とは打って変わって、アーサーは眉間に皺を寄せていた。)
なんだよ。そんなに帰れるのが嬉しいのか?
俺はこんなに……こんなに悲しく思ってんのに。お前が帰っちまう。そりゃあ、この世界の○○に暫く会えてないし、そろそろ○○に会いてえなとは思ってたけど。でも、そしたら、並行世界のお前は…消えちまう。
ずっと考えてたんだ。お前も、○○も、二人ともここに存在するにはどうしたらいいんだろうって。
中々そんな都合のいい魔法がなくてな。
…だから、お前をひとつにする事にした。
ひ…ひとつに……?