「ま、待ちなさい!」
私は急いで彼女の肩に手を当てた。
「なんですか? とミサカは肩に手を当てた人の顔を見ます」
彼女は私に顔を向けた、すると彼女の目と私の目が合った。その瞬間、私は運命のような、不思議な感覚にとらわれた。
「あ、ああ……銃をしまってください、アンチスキルに通報されたら逮捕されちゃいますよ! それに銃で撃って風船に当たったらどうするんですか!」
「それもそうですね、忠告ありがとうございます、とミサカは忠告をしてくれたあなたに感謝します」
彼女はそう言うと銃をカバンにしまった。しかし、なぜ中学生が銃を持っているのだろうか、しかも最新鋭の軍用ゴーグルまで。彼女はただの女子中学生、という訳ではないようである。
「うぉい! 僕様の風船どうなんだよですか?」
先程の子供が風船を指差して叫びだした。
「困りましたね、とミサカは私を止めた張本人を見つめつつ言ってみます」
私にどうにかしろ、ということであろうか。
あの高さであれば登ることくらい出来るであろう。登って取ってあげることにしよう。
「わかりました、了解です、あの風船取りに行きますよ」
「おおおおおおおおお!! ヌシやるなぁ!! 座蒲団一枚やるよです!!」
「流石ミサカに忠告をしただけのことはあります、とミサカは彼に拍手喝采を送ります」
この娘の名前は、「ミサカ」なのであろうか? そんな事を考えつつ、私は木の下へと向かった。
この木、近くへ来ると結構大きかった。しかし、この程度ならば何ら問題はない。木に手を掛け、ロッククライミングのように手足を掛けやすい所を探しつつ、どんどん私は登っていった。
「学園都市の住民にしてはなかなかですね、とミサカは関心します」
後ろからミサカの声援が私の耳に届き、やる気が出てきた。私はそのままハイペースで登りつめて行った。
しばらくして、ようやく風船に手が届く距離まで近付いた。私は大丈夫だろうと考え、そのまま手を一気に伸ばした。
「あと少し……!」
風船の紐を掴んだ! よしっ、と私は心の中でガッツポーズを決めた私は降りようとした。しかし、私は足を滑らしてしまった。
足を滑らした私はそのまま真っ逆さまに落ちてしまった。
「うぁあぁあぁぁぁぁああぁあぁぁぁ!?」
「危ない! とミサカは叫びつつ落ちる彼の元へと向かいます!」
「オーマイガー! 死んでしまえです!」
もう、駄目かもしれない。そう考えているとこれまでの事がフラッシュバックのように、明確に写し出されていった。これが走馬灯というものなのであろう。人間はピンチになると、走馬灯が発生し、辺りがスローモーションのように感じられるという。と、いうことは命が危ない、ということなのだろう。これまでの人生、短いながらも楽しかった……。
私はそのまま、まぶたを閉じ、この人生に別れを告げた。
「さようなら……我が人生!」