ジリジリと目覚まし時計が部屋に鳴り響く。私は目覚まし時計に手を当て、音を消す。
「ふぁーあ…………昨日は色々あったな……」
御坂妹……元気にしているだろうか。
「また、会えたらですが、か……」
レベル5、御坂美琴の遺伝子を利用して作られた軍用クローン、御坂妹。彼女が私に最後に残した言葉。なんとも意味深で、なんとも嫌な感じだ。こうしている間にも、何処かで痛み付けられているのではないか、そんな気がしてならない。
クローン、なんとも狂っていて、愚かで、馬鹿馬鹿しくて、それでもって素晴らしい。
また、彼女に会えたなら、嬉しい限りである。いや、会わなくてはならない。もう一度必ず会ってみせる。
「さて、気分転換に朝の日課である掲示板書き込みに励むか」
私は上半身を一気に起こし、パソコンへと顔を向けた。
いざ、ネット巡回警備へ!
そこには、茶髪の天使の顔があった。いや、正確に言うと私のベッドの上に天使が正座していて、私がパソコンの方向を向くとそこには丁度正座している天使の顔があった、という具合だ。
「ぁ…………あ……ぁあ………………?」
「おはようございます、とミサカはお辞儀しつつ朝の挨拶をします」ゴツッ
「……痛っ!? あ、あぇ?」
「どうしたのですか? とミサカは痛みを得意のポーカーフェイスで誤魔化しつつ質問します」
「い、いや、なんで居るの? 天使が。いや、御坂妹!?」
「あなたが帰る時これを忘れて行ったので追いかけて行ったんです、そしてミサカは悲愴の曲調に合わせつつインターホンを連打しても応答がないのでお邪魔させていただくと、あなたが寝ていたのでパソコンを起動させて、掲示板書き込みしていたら目覚まし時計がなったので、あなたの寝ているベッドで待機していました、とミサカは気配りの良さや教養の高さをアピールしつつ長文で説明します」
「は、はぁ……」
「…………」
これは、ストーカー行為を暴露しているようにしか思えなかったが、そんなものはイタリアにでも置いておいて、忘れ物を確認してみる。
「低酸素供給器!」
そう、彼女が私に返してくれたのはトレーニングッズであった。
「あ、ありがとう、この恩は必ず返しますよ!」
「では、私をここに居候させてください、とミサカは恩のお返しを要求します」
「ははは、いいよいいよ! ……え?」
「もう一度説明しましょうか? とミサカは気を効かせます」
「い、いや……いいよ…………」
「そうですか、では認めてくれるんですね」
「えーと、なんで?」
「私が利用していたミサカ・ホームがなぜか突然壊れたので、とミサカは雨に濡れて壊れたマイホームの事を懐かしみながら答えます」
「そのミサカ・ホームというものの素材は?」
「ダンボールです、とミサカは正直に答えます」
「……」
「……」
この人はホームレスか何かなのか?「あ、ははは……独り暮らしですし、広いですし、良い、ですよ……」
「おお、恩にきります、グッジョブ! とミサカは恩を売って住まわせてもらう作戦が成功したことに歓びを感じます」
重大なことを平気で言ってのけたことが気のせいであることは空耳であることを願いたい。
まぁ、そんな感じで二人の同居生活が始まるのであった。
【
出会い編あとがき】注:管理人が出ます