「どうしてあなたがこんな時間に屋敷にいるのかしら。門番は何をやっているのよ」
頼りになる人間、十六夜 咲夜(いざよい さくや)さん。
それでも私が渋った理由は、開口一番からこの調子なことは分かっていたからである。
「えーっと、事情を説明したら快く通してくれましたけど」
「一回ウチの門番に、『門番』って言葉を辞書で引かせた方が良いかしら。……それで?この館に何の用かしら」
「その……今日はあなた、咲夜さんに用があって」
「私?」
「はい。その、チョコレートの作り方……教えて貰っても良いですか?」
「……はい?」
「えと、ですからほら、今日はバレンタインじゃないですか。それで……」
「それは分かるけれど、でも、チョコレートをカカオから作るとなるととてもじゃないけど間に合わないわよ?」
「あ、違います違います!そうじゃなくって、その……溶かしただけというのはやっぱりその、味気ないかなって。……大切な人に、あげたいので」
「えーと?つまり、溶かしたチョコに一手間かけたいってことでいいのかしら」
「は、はい!そうです!それです!」
「そんな事でわざわざ悪魔の館に来たの?」
突然ここにいない声がしたかと思うと、どこからか赤い霧が集まって大量の蝙蝠が現れた。
蝙蝠たちはキーキーと鳴きながら一箇所に集まり、そしてこの館の主……レミリア・スカーレットとなる。
いつから聞いていたのだろう。
「どうしましょうお嬢様。追い返しますか?」
「……いや。いいわ。付き合ってあげなさい咲夜」
「い、いいんですか?」
「……はぁ、お嬢様の命令なら仕方ないわね。……ここに居ても仕方ないし厨房に行きましょうか」
「はい!」
→