名前:ミスティア・ローレライ

焼いた鰻の数106本

鰻一本

【夏祭り・終盤】
「やれやれ……。あ、○○。あと在庫どれ位?」
「もう殆どないかな?10ちょっと」
「そっか。じゃあもうちょっとだね。気を抜かずに頑張ろう」
「了解」
「雀さん、八目鰻くださいな」
「あ、いらっしゃ……、いませ……」
いつも元気良く挨拶する彼女が、後半急に声を萎ませた。
「ん?どうしたんだ、よ」
その答えは、すぐ目の前に在った。
在ったというか居た。
「ん?どーしたの?二人とも。私の顔に何か付いてる?」
実際、彼女の口の端に何かのソースが付いてはいたが、そういうことではない。
どうやって持っているんだというほど大量の食べ物を抱えているのに驚いたわけでもない。
西行寺幽々子そのヒトが来ていたのだ。
冗談か本気か、ミスティアを食べるなどとのたまう食えないヒト。
それでも客は客なのでして。
「い、いえ。何でも無いです幽々子さん。ところで、今日は何用で?」
「今、言ったじゃない。八目鰻、下さいな」
「えと……。お幾つでしょうか?」
「そうね。この後も色々回る予定だし少なめかしらね?50匹位いただけるかしら?」
一体どこが少なめだよ……。
このヒトの少なめの基準がわからない……。
「あ、えと、申し訳ありません。もう在庫が10匹程しかないんですよ」
「あら、そうなの。残念だわ。それっぽっちじゃ雀の涙ね」
その言葉の意味をきちんと辞書で引いてくるべきだ。
「在庫が無いのなら仕方ないわよね。ねぇ、雀さん?」
「はい?……ひっ!!」


その言葉は確実に前から聞こえたのに、気付くと幽々子はミスティアの真後ろに居た。
フォークを構えて。
「え?え?……あれ?」
「貴方って、とっても美味しそうよね♪」
こ、これは……冗談抜きでまずい……!
「貴方だけで鰻五十匹くらいの価値があるわ!」
「うぁ……!」
「ゆ、幽々子さんストップ!」
「ふふふ、ダーメ」
止めに入ってはみるものの、気付けば地面に突っ伏していた。
勝負にすらならない。
「それじゃ、頂きまーす」
これまでか……。
ごめん、ミスティア。
俺、お前を……。

夏祭りイベント11