名前:ミスティア・ローレライ

焼いた鰻の数106本

鰻一本

――がばっ
ここは……?
「あ。気が付いた?ここは私の家だよ」
「え?……あ、君はさっきの……」
「あ。覚えててくれたんだね」
「……そりぁあれだけインパクトのある出会いをしたらね……」
「ちょっとまってて。今お医者さん呼んでくるから」
ぱたぱたと音を立てながら、部屋を出て行く。
まだ、頭が重い。
暫くすると銀髪を後ろで一本の三つ網に纏めた、赤と青という不思議なツートンカラーの服を着た女性が入ってきた。
「目が覚めたのね。怪我の具合はどうかしら?」
この人がミスティアの言っていた医者だろうか
「あ、いえ、どこも痛くはないです」
「名前は思い出せる?年齢は?誕生日は?」
「はい――
言われるまま、答える。
「大丈夫そうね。外傷は転んだときの傷だけ。気絶したのはショックが大きかっただけみたい」
「……」
「申し送れたわね。初めまして、私は八意 永琳(やごころ えいりん)」
「あ。はい……どうも。」
「災難だったわね」
「ええ、まぁ。あんな怪物に会うなんて……」
「いいえ。妖怪に襲われる、なんてことは別にここでは珍しいことではないのよ。ただ、貴方の場合は特別だから」
「特別?」
「そう。まず、いろいろな前提から話さないといけないわね」
そう言ってこの医者はさまざまなことを語った。
ここが『幻想郷(げんそうきょう)』と呼ばれる偏狭の地であること。
幻想郷では、現世から見捨てられた妖怪と人間が共存していること。
そして、俺はそこにただ運悪く迷い込んでしまったのだということ。
普段の俺なら否定しただろう。
しかし、もう十分に信じざるを得ない材料を目の前に揃えられた後だった。
何より今、目の前にいるこのお嬢さんが一番の証拠だろう。
「どうしたの?」
きょとんとこちらを見る彼女の背中を見ると、羽がゆっくりと動いていた。
やはりあれは、彼女の体の一部なのか。
「あ……いや。なんでもない」
「さて、話を続けてもいいかしら?」
「あ……おねがいします」
「外から迷い込むのもまぁ、少々珍しいだけで無いわけではないわ。そして、そこから帰ることも」
「本当ですか?」
「残念だけどそれは無理な話ね」
「え?」


幻想郷入り11