名前:ミスティア・ローレライ

焼いた鰻の数106本

鰻一本

突然、ここにいる誰のものでもない声が聞こえた。
年老いているような、幼い少女のような、形容しがたい声。
辺りを見渡してみたが俺とミスティアと永琳さん以外誰も居ない。
そのはずなのに、驚いたのは俺だけだった。
代わりに医者は眉間に皺を寄せ、翼の少女は顔に緊張を走らせている。
「……それはどういう事かしら」
「そのままの意味よ」
突如なにもなかった空間に亀裂が入って中から女の人が現れた。
緩やかにウェーブがかかった長い金髪を揺らし、日傘を肩に乗せ、顔を扇子で隠しながら微笑んでいる。
姿は少女でありながら、少女には出来ない笑みを浮かべていた。
アンバランスさが、非常に気味悪い。
「あら、驚かせちゃったみたい」
だが、それよりも異様なのが彼女が腰掛けている場所。
空間としか形容できないその場所には、眼球がびっしりと敷き詰められ全てこちらを見ていた。
「初めまして。私は八雲 紫(やくも ゆかり)。外の世界とこの幻想郷との結界の管理者よ」
「あ、う……」
ただただ不気味だった。
見た目はなんでもないのに、存在した瞬間に圧倒された。
「苛めるのはこれくらいにしましょうか」
――パチンッ
「――あ」
彼女が扇子を閉じると、その威圧は一瞬で消え去る。


幻想郷入り12