「辛いかも知れないけど今は休みなさい……。それが今の貴方に出来ることよ」
金髪の少女は、謎の空間の中に消えながらそう告げた。
「……私もそろそろ帰るわね。今の彼には考える時間が必要だし……何かあったらまた呼んでちょうだい」
「うん、そうね。それじゃ、私も」
「待って」
思わず呼び止めてしまった。
改めて彼女を見てみる。
長い爪。大きな耳。そして翼。
「……本当にここは違う世界なんだな」
「うん。……やっぱり帰りたいかな」
「いや……そういうわけじゃないよ」
「へぇ、そうなんだ」
「戻ったとしても、つまらない日常が始まるだけだった」
「……でも君を心配してる人だっているんじゃない?」
「……いないよ」
「え……?」
「俺さ。父さんも母さんも小さい時に死んじまってるからさ……おまけに親戚もいないし友達も作ろうと思わなかったし……正真正銘の天蓋孤立って奴だよ。だから俺を心配してくれる奴なんかいないよ」
そう。
くじ引きに当たった旅行に来た理由。
最初は行く気はなかった。
でもその旅行の前日、ふと死に場所を求めて参加したのだ。
生きていく意味を、感じなかったのだ。
妖怪から逃げたときは、まだ覚悟が出来ていなかっただけ。
そして、崖から落ちたときはそのままでもいいと思っていた。
「ごめんね。私、無神経な事言っちゃった……」
「あ、いや。いいんだ。気にしてないから」
「うん、ごめんなさい……」
優しい子、なんだな。
彼女の事を知らない俺でもそれだけは分かった。
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