「あ、私も君に大事な事聞くの忘れてた」
「え?」
「君の名前、聞いてなかったよね」
「あっ」
そういえばまだ教えてなかった。
「教えてくれるかな」
「うん。俺は……俺の名前は○○」
「そう。……○○、○○。うん、覚えた。私の名前は覚えてる?」
「ああ。ミスティア・ローレライ、だよね」
「うん、正解。……ねぇ、○○。良かったらさ」
「ん?」
「ウチで、働かない?」
「えっ……?」
「私ね、屋台やってるんだ。最近はお客さんも増えてきたから良いバイトさんでもいないかな?って思ってたの」
……。
「三食寝床付きの住み込みでどうかな?」
恐らく、気を使ってくれているのだろう。
こんな良い申し出を断る理由は無い。
俺に、行く宛なんてないんだから。
「分かった。お願いするよミスティア」
「ふふ。ビシビシ言うから覚悟しといてよ?」
俺は最初、死のうと思っていた。
それでも結果として彼女に助けられ、今もこうして生きている。
もしそこに意味があるとするのなら――
「お手柔らかに頼むよ……」
こうして俺は、ミスティアの屋台で働くことになる。
幻想郷入り16