目を覚ましたらここにいた。
木、木、木、木、見渡す限り、それしかない。
聞こえるのも、鳥や虫の鳴き声だけ。
日はまだあるが、頂点は過ぎているように見える。
何だか体中が痛い。
そもそもなんでこんな場所にいるんだっけ……?
たしか俺は……そうだ。
旅行に来てたんだ。
商店街の福引が当たって……山奥の旅館まで来たんだったな。
そして山を適当に散歩してたら何かに躓いて……山道を転げ落ちたんだ。
今どのへんだろうか……?
とりあえず立ち上がってはみるものの、何も森の中に居ることしかわからない。
本来、山で遭難した場合は歩かないほうが無難だ。
だが俺を探しにくるような人は居ない。
携帯を開いてみるが、アンテナは立ちそうもない。
「……」
歩き出してはみるものの、検討もつかない中をただ進むのは気が滅入った。
何か頼りがないかと耳を澄ませていると、不思議な音が聞こえた。
鳥でも虫でもないし、ましてや人工物から発せられる音でもない。
……酷く不気味だ。
早く此処から出よう。
もうどれくらい歩いたのだろうか。
足が重くなってきた。
やはり動かないほうが良かったのか……?
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