そして開けた視界には、……崖があるだけだった。
見渡しても、橋どころか向こう岸すら見えない。
後ろからは正体不明の化け物。
前には断崖絶壁。
畜生っ!
退路も進路もなく、ダレカと対峙することになってしまう。
――ガサッ
「ひっ!!」
月明かりの下で、虫のような獣のような異形が佇んでいる。
紅く光る目のような部位が俺を捕らえていた。
「なんだよこれ……」
それはゆっくりと、しかし確実に俺の元に迫ってくる。
もう逃げ場は無い
怪物が一歩、前に出た。
じわじわと追い詰めるのを楽しむかのように、ゆっくりと近づいてくる。
その姿から目を離せずに、無意識に一歩後ろに下がってしまった。
……それが、失敗だった。
「うわぁっ!!」
崖の淵が崩れ、重力に引きずられていく感覚が全身を包む。
なんでこんなことになってしまったんだろう。
いや、そんなこと今更考えても仕方ない。
だって、もうすぐ俺は……死ぬんだから――
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