―――暗い。
まぶたが重い。
身体が思うように動かない。
鼻こうに広がる
生ぐさい血のにおい。
『ククク…ジャレッド……』
脳内にひびく声。
『早くおれ様に身体をよこせ』
美しい青年は
引きちぎれそうなのどを
がんばって開く。
「オレはお前の野望のために
生きてるんじゃない。
この身体は
在りし日のマクナルティ帝国の
名よとほこりを
取りもどすためにあるんだと、
お前も言っていたじゃないか。
アイザック、
ついに闇に喰われたのか?
かつてのほこり高きお前は
どこへ消えた」
青年が息たえだえに
そう言っても、
ぶきみな笑い声が
やむことはなかった。
『クッククク、
漆黒の禿鷲ジャレッド。
お前もじきにこちらに来るだろう。
じきにな…』
青年は血のような赤い目を
眠けにあらがうことなく閉じた。
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… … …
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