博麗霊夢は、努力が嫌いだった。
 彼女がその考えを抱くに至った理由は様々である。もともと面倒な事が嫌いな性格だったし、持って生まれた余りある才能のお陰で、努力せずとも問題なかったのもあるだろう。
 だが――一番の理由は、努力が報われる事はないと、霊夢が信じてしまっている事だ。
 一月一日、元旦。世間が正月に浮かれているこの日において、霊夢はその想いをより強くした。

「はぁ……」
 昼前の博麗神社。博麗霊夢は、社の前に設置された賽銭箱に両手をついたまま重い溜息を吐き出した。
 幻想郷は真冬の只中である。思わず漏らした嘆息も白くけむる。暖を取らなければ、家の中にいても凍える寒さだ。
 それなのに、どうして神社の外に彼女は出てきたのか――。それは偏に、参拝者とお賽銭の為である。
「どうして誰も来ないのかしら……」
 霊夢は中身のない賽銭箱から視線を上げて、鳥居の先を見つめた。境内には真っ白な雪が積もっているが、参道は綺麗に片付けられ、地面の石畳が覗いている。霊夢が雪かきをしたのだ。参道だけではなく、石段も。
 近年、幻想郷にはライバルたちが増え続けている。このままでは参拝者も減り続けるだろう。だから、霊夢も負けじと手を打ったのだ。
 人里から神社へと通じる道にいた妖怪は片っ端から退治し、人里に寄った時には軽く宣伝もした。参道と石段の雪かきも、その一環である。
 怠け者の印象が強い霊夢にしては、頑張った方であるが――結果は、空っぽの賽銭箱が無言で語っていた。
 霊夢が再び白い溜息を一つつくと、一陣の木枯らしが吹き抜けた。カルマン渦の流れが不気味な響きを伴って空気を震わせる。霊夢は、思わず自分の体を抱いた。
 これ以上待っても、誰も来ないだろう――諦観に染まりきった霊夢が賽銭箱の傍から離れようとした時、目の前の空間に裂け目が走った。霊夢は驚かなかった。こんな登場をする人物は一人しか思いつかない。空間の裂け目がぱっくりと開くと、霊夢の想像通りの妖怪が姿を見せた。

正月イベントおまけ2