空間の裂け目から出てきたのは、日傘を手にした美しい金髪の少女だった。派手な白の導師服に身を包み、この冬でもあまり寒くないように見える。稀代の名工に造られた人形のように整った顔には、いつもと変わらない飄々とした微笑を湛えていた。
「はぁい、霊夢。何だか暗い顔してるわね」
金髪の少女――八雲紫は微笑みを崩さず、霊夢に語りかけた。霊夢は煩わしそうに紫を見返すと、ちらりと鳥居を視線で示した。
「……見ればわかるでしょ。誰も参拝に来ないのよ。色々やったのに……」
「貴方が、神社の為とはいえそんな頑張りを見せるとはねぇ」
話を聞いた紫が、わざとらしく驚いて見せた。その反応はわざとらしくて、実際にわざとである。紫は霊夢が元旦に備えて頑張っていたのを知っている。
しかし、結果がどうなるのかは目に見えていた。現実を目の当たりにした霊夢の様子が気になり、わざわざ見に来たのだ。無論、目的は嘲弄する為ではない。
「努力が報われる事はないって自分でもわかっていたのにね……。あーあ、骨折り損だったわ」
霊夢が、肩を竦めてやれやれというように力なく首を横に振った。それを見た紫が無言で賽銭箱の正面に移動すると、厳かに二礼した。
賽銭箱の上空に空間の裂け目が走り、そこから一枚のお札がひらひらと舞い降りて来た。吸い込まれるようにして賽銭箱の隙間に入り込む。
それを確認すると、紫は拍手を打ってお参りを済ませる。最後に一礼して、再び霊夢を見た。こちらをじっと見つめてくる霊夢に対して、紫は柔和な笑みを零す。
「継続は力なり。一度や二度で諦めては駄目よ」
紫の言葉には、諭すというよりも元気付けるような響きがあった。きょとんとした顔で霊夢が訝しげに紫を見返す。紫にしては、至極まともな事を言うと思ったからだ。
しばらくの間を置いて――霊夢が安心したように小さく笑った。言葉を交わさずとも、それで十分だった。お互いの気持ちを理解できた。
「ねぇ、紫……」
穏やかな沈黙の後、霊夢が口を開いた。なにかしら、と紫が上品な仕草で小首をかしげ、次の言葉を待つ。
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