新たに神社の来た二人は、紅魔館の館主レミリア・スカーレットと、その従者の十六夜咲夜であった。レミリアが境内の中に歩を進めると、日傘を保持する咲夜もそれに合わせてぴったりと寄り添って歩く。決して主が日の光に晒されないように、完全で瀟洒な従者は常に細心の注意を払っている。
この場にいる人物にとっては周知の事実だが、レミリアは吸血鬼である。そしてその従者である咲夜は人間だが信仰心など持ち合わせてはいない。
そんな彼女らが博麗神社に何をしに来たのかと霊夢が訝しんでいると――向こうの方から声をかけてきた。
「初詣に来てあげたわ」
偉そうにそう言ったのは、幼き少女の姿をした吸血鬼だった。白皙の顔に意地の悪い笑いをひらめかせ、血を連想させる真紅の双眸でその場にいた全員を見渡す。
主の傍らに控える紅魔館のメイド長は、ニコニコとたおやかな微笑を絶やさずにいる。なんとなく不気味に感じた霊夢がレミリアに問うた。
「あんたらが神様にお祈りするの?」
「私が祈るのは、明けの明星よ」
明けの明星とはつまり、悪魔の長であるルシファーを示す。
「天香香背男命か。今年はしっかりと封じたわよ?」
霊夢は毎年、日の出を迎える前に天香香背男命の力を封じる儀式を執り行う。初日の出によって、金星の輝きが消え去るように。
何故そんな儀式をするかといえば、もしも明星が太陽に負けなかった場合、その年は妖怪の年になってしまうと言われているからである。
数年前に一度だけ儀式が失敗して、明けの明星と太陽が同じ東の空に映った事もあったが――それ以降は、儀式は全て成功している。
「……ま、いっか。好きにしなさい」
あっさりと霊夢は吸血鬼を認めた。もっとも、その言葉を聞く前に既にレミリアは動き出していたが……。
既に、例年よりも参拝者は多い。しかし、参拝客はこれだけに留まらなかった。
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