その日の夜――博麗神社。幻想郷は人も妖も神も、賑やかさを好む。そんな彼女らが集まれば、なし崩し的に宴会が始まるのはもはや必然といえる。
 八雲紫はしばらく霊夢や○○たちと宴席の中心で飲んでいたが……頃合を見計ると席を立って、宴会会場の隅に移動した。
「貴方の思惑通りね?」
 徳利から濁酒をお猪口に注ぎ、中空に掲げて妖怪少女は独語する。端から見れば完全な独り言だが、実はそうではない。
 いつのまにか、紫の言葉に応じるようにして白い霧のような靄が集まり、それはやがて幼い少女の形を為したのである。
 その少女の頭には、種族を象徴する二本の角が生えていた。少女の名前は伊吹萃香――幻想郷でも数少ない、伝説の鬼である。
「頑張ってる霊夢を見てたら、なんだか放っておけなくてね」
「だから、貴方が人間やあやかしを萃めた……と」
 萃香は紫から差し出されたお猪口を受け取ると、一気に飲み干してしまった。鬼である彼女は無類の酒好きであり、底なしのうわばみだ。
「でも、最終的に神社に行く判断を下したのは一人一人の意思。私はほんの少し、霊夢の事を思い出させただけに過ぎない」
「ふふっ……霊夢が好きなのね」
「そういうあんたこそ、まるで妹を見守る姉のようだったよ」
 紫と萃香は顔を見合わせ、同時に笑った。人と妖の楽しそうな笑顔と、笑い声が元旦の夜遅くまで博麗神社に萃まっていた。

 博麗霊夢は、努力が嫌いだった。
 彼女がその考えを抱くに至った理由は様々である。もともと面倒な事が嫌いな性格だったし、持って生まれた余りある才能のお陰で、努力せずとも問題なかったのもあるだろう。
 だが――一番の理由は、努力が報われる事はないと、霊夢が信じてしまっている事だ。
 しかし、一月一日、元旦。霊夢はほんの少しだけ認識を改めた。といっても表面上は大して変化はない。今まで通りの心境のままである。
 ただ、ちょっぴりだけ、来年も頑張ろうかなと霊夢は思った。それだけである。
正月イベントおまけ7