秋の夕暮れ
いつもはこの時間には誰もいない白玉楼の縁側なのだが、最近いつも幽々子がそこでたそがれている
いや、そう見えるだけで実際は違うのだが
なんでも月見団子を待っているらしい
月見が外の世界と同じ時ならば、今待っていても来るはずがないのだが
何だか遠足を待ち侘びる小学生のようだあら、貴方もお団子を待ちに来たの?
でも残念ね
私の方が先に待っているの
だから一番団子は渡せないわ
一番団子…?
一番最初に食べる団子のことだろうか
正直、そんなものに興味はない…そう言えば貴方が来てからもう一年が経つのよね
早いものだわ
そもそも何故うちに来たの?
幽々子様が連れて来たんじゃないですか団子を待ち続ける幽々子を見かねたのだろうか
妖夢がお盆を持って現れた
といってもお盆に乗っているのはお茶と煎餅だけで、幽々子の目的である団子はない
妖夢は俺と幽々子にお茶を渡し、幽々子の隣に座ったあの時は瀕死だったから覚えてないかもしれないですけど、貴方は幽々子様が怪我をさせて運ばれたんですよ
最初は冥界に生者を連れてくるなんて…と言ったんですけどあら、でも結果としては良かったでしょう?
何だかんだで妖夢も彼に懐いているじゃない
私から見れば仲の良い兄妹に見えるわよ
…あ、恋人の方が良かった?
か、からかわないでください!そう言えばそうだった気がする
全然覚えていないが
気が付いたら幽々子と妖夢が目の前にいたし
…そもそも何で怪我なんてしたんだ?
しかも瀕死の
俺は幽々子に尋ねてみたえーっと…
それ聞きたい?
私も気になります
弾幕勝負に巻き込んだって言ってましたけど、一体誰と戦ってたんですか?あれはねー…
夜に可愛い歌を歌う美味しそうな小鳥ちゃんが飛んでいてねー
小腹が空いていたのもあってついつい
そしたら鳥目にされちゃってねー
逃がしたくなかったからその辺りに弾幕をばら撒いたら…というわけよー
幽々子様が全部悪いじゃないですか!だ、だから罪悪感を感じて冥界まで連れて帰ったのよ
あそこでは治療も満足に出来なかったし
で、でも良かったでしょう?
妖夢もお兄ちゃんが出来て
酷すぎますよ…つまり俺は食欲に殺されかけたのか
そしてその相手と今も一緒に暮らしている、と
幽々子らしいと言えばらしいが…でも反省はしたのよ
だからその後の弾幕勝負も、右を見て左を見て、もう一度右を見てからするようになったわ
幽々子のよく分からない反省を聞き流しつつ、俺と妖夢は溜め息を一つついたちょうどその時