会場の扉を開けると、途端に大きな歓声と拍手に包まれた
その中に近づいてくる者が一人
霊夢だった
何やら怒っている様子だ幽々子!
こっちから呼ぶって言ったじゃないの!
何であんたから来てんの!?良いではないの
どうせそろそろ始めろとか言われてたのでしょう
勝手に始められても困るしね
…まあ良いわ
丁度今から呼んで来ようと思ってたところだし
ほら、さっさと席について相変わらずの拍手と歓声の中、貴方と幽々子は霊夢の示す席へと案内されたえー…
それではこれより、披露宴を始めたいと思いますははは
霊夢、話し方が気持ち悪いぜうっさいわよ魔理沙!
私だって似合うなんて思ってないわよ!
あー…
もう何か茶々を入れられたら恥ずかしくなってきたわ
それじゃ、幽々子の上司の映姫、お願い随分と酷い紹介の後、映姫が席を立った
その呆れ顔は霊夢と魔理沙
どちらに向けられたものなのかただいまご紹介に預かりました四季映姫です
幽々子さん、そして旦那様
この度はご結婚、おめでとうございます
同時に、このような盛大な披露宴にお呼びして頂けたことを深く感謝致します
さて、幽々子さんについてですが、彼女は実に聡明であり、私につきましても幾度も仕事で助けられました
彼女はおよそ1000年ほど冥界の管理者として日々仕事に邁進しておりますが、その仕事につきましてはとても真面目であり、冥界に住まう幽霊達の居場所が少なくなると、冥界増築のためのきっかけを作ったりしました
多少頑固で我儘な面がある彼女ではありますが、それをものともせず彼女との一線を越えた旦那様ですから、結婚生活においては心配はしておりません
きっと、自由奔放な幽々子さんに対し、上手くリードをして、円満な生活を営んで頂けることでしょう
お二人の末永い幸せを祈願致しまして、紹介の言葉と代えさせて頂きます映姫が最後にお辞儀をすると、会場は拍手に包まれた
映姫は貴方達に身体を向けると再度お辞儀をし、自分の席に戻っていったひどいわー
真面目な映姫らしい言葉に対し、幽々子はそう呟いた
怪訝な顔を向ける貴方に対し、幽々子はこう言ったあれでは私がただの問題児ではないのー
まあ問題児なのは自覚しているのだけれど…
嘘を言えないというのも、こういう時に面倒よねー
確かに悪い面も言っていたが、良い面もきちんと言っていた
冥界の増築など、まさにそうではないだろうかあれはねー…
色々あったのよ
今でこそ広い冥界だけれど、前はこれよりも格段に小さかったのよ
天界が飽和状態になってしまっている現状では、地獄に行かない方々は取り敢えずの処置として冥界に来るのだけれど、それによって冥界に幽霊が溢れ返ってしまったの
足の踏み場もない…というのは言い過ぎだけれど、それに近い状態だったのよ
勿論冥界の増築について上申したけれど、それも一日二日で出来るものではない
しかし、幽霊の居場所はどんどん減り続ける
そこで私が考えたのが、みすてりーすぽっとに幽霊を置いて管理するというものだったの
と言っても、閻魔様に怒られてすぐにやめてしまったけれどね
でもそれがきっかけで冥界の現状について閻魔様が直々に各方面に伝えてくれて、急ピッチで冥界の増築がされた、というわけよ
だから、私にとってはそれを聞いても複雑よ
次は友人代表の紫、お願いね幽々子の話は、霊夢が紫を呼んだことにより打ち切られた
映姫と同じく紫は席を立ったえー、こほん
皆様、本日は御機嫌ようございますわ途端に巻き起こるブーイング
まだ挨拶しかしていないのだが
あらゆる場所から「気持ち悪い」、「その話し方やめろ」と言った言葉が湧き立つ
紫はその一切を意に介さず話を続けたさて、幽々子さん
いえ、改まった話し方はやめましょうか
幽々子、まずは結婚おめでとう
正直な話、初めて話を聞いた時はいつもの嘘かと思ったわ
貴女はまず結婚なんてしないと思っていたしね
色々と考えがあったようだし
それをねえ…
男女の恋愛というのは凄いわね
そして貴方
私は貴方が憎い
それこそ、殺してしまいたい位に
一人の人間にこれほど殺意を抱いたのも久しぶりよ
私が知っている幽々子を貴方が変えてしまったからね
でも…
未来は知らないけど、今はこれで良いと思っているわ
もし未来に望まない結果が生じたなら…
その時は私が直々に貴方を殺す
以上よ友人の挨拶というよりは殺人予告のような言葉を話した紫は、それだけ言うと満足したのか席に着いた
その言葉と何より紫の剣幕に、周囲は拍手をするのを控えたようだ
何とも言い難い静寂が辺りを包むふふ、紫らしいわねー
以前デートをした時に、「紫は貴方を好いていないからマヨヒガは駄目」みたいなことを言ったでしょう
これは私の推測でしかないけれど…
紫は貴方に嫉妬しているのだと思うのだわ
私は紫と生前からの付き合いらしいのだけれど、私は生前の記憶をすべて、それこそ紫の記憶すらも持っていない
それでも紫は私を気にかけてくれた
私も知らないのだけれど、どうやら私のために色々としてくれたらしいわ
そんなところに貴方が現れて、短時間で、当然のように私を攫っていく
紫としては怒りを覚えて当然でしょう
案外、あの「殺す」も本心かもね
ふふふ、大変な方に目を付けられてしまったわねー
幽々子は楽しげに笑った次へ