名前:西行寺 幽々子

189面ボス   (8でショートカット説明書)

餌を与える

居間の扉を開けると、声が聞こえてくる
微笑と、恐怖に包まれた声
それはどうやら奥の方から聞こえてくるようだ
奥を見ると、確かに何やら大きな影が一つ見える
声が二種類であるところを考えると、あの影は二人の重なった影なのだろうか?
だとすると…
俺は恐怖心よりも好奇心に駆られ、嬉々としてそこに向かっていった
ゾンビフェアリーが俺を軽蔑したような顔をしていたが、そんなことは気にしない


ふふ…ふふふ…
若い身体…
ねえ…私に…頂戴…

ひ…嫌…だ、誰か助けて下さい…



奥では女性が少女を押し倒していた
女性の顔は見えないが、少女が怖がっているところを見ると、あまり見たいとは思わない
少女は何とか脱出をしようとしているみたいだが、まるで金縛りにでもあっているかのように動かない
このまま少女はあの女性の毒牙にかかってしまうのだろうか


た…助けて…下さい…

あら…
ふふ…また若い身体の気配…
ねえ…貴方も…

こちらに気付いた少女は俺に助けを求めた
女性もこちらに気付いたのだろう
少女のほうを見たまま、俺に言葉を投げかけてくる
そして…




身体を…頂戴…

振り向いた女性は光の宿っていない瞳でこちらを見る
死んでいることは明らかだった
彼女にはまるで生気が感じられない
女性はゆっくりとこちらに近付くと俺の顔に手をやった
手は、まるでこの女性の心の中を反映しているかのような冷たさだった
俺が抵抗をしないのを見ると、女性は口元に微かな…しかし邪悪な笑みを浮かべ、俺の唇に自分の唇を重ねた
徐々に力が抜けていく
悪寒を感じたのは女性の唇が冷たかったからか、それとも…




ちょ、幽々子様、吸い過ぎですよ
それ以上やったら本当に死んじゃいます


あら、いけないいけない
久し振りに「故人のお届け物」なんてしたから、ちょっと加減が分からなくなってたわ
まだ生きてる?

俺は幽々子の唇から解放されると、その場に座り込んだ
ただの口付けだと思っていたが、体にまるで力が入らないことを考えるとどうやら違うらしい
俺は座りながら幽々子に抗議の視線を向けた


良いじゃないのー
お化け屋敷なんていうカップルご用達の場所に一人で来るから、せめて少しくらい甘い思いをさせようとしただけなのに
感謝されこそすれ、抗議される筋合いなんてないわ

幽々子は俺の目を見ると、頬を膨らませた

ところでどうだったかしら?
なかなか怖かったでしょう?
私もまだまだ捨てたものではなかったでしょう?

幽々子が子供のような無邪気な顔で俺に聞いてくる
その顔を前にして、俺は真実を言うことが出来なかった
影が二つ重なっているところで俺が妙な想像をしたために、実は全てそっち方面に見えていたことに
最後のキスもあったため、完全に俺にとっては…
幽々子相手には無駄かもしれないが、俺は努めて心を読まれないよう嘘の感想を述べた


へーそーですかー…
全部卑猥に見えていた、と
失礼しちゃうわよね、妖夢

本当ですよ
こっちは本気で怖がらせようと思ってたのに
少しは煩悩を断ち切って下さい


案の定幽々子に全てを見透かされた上、妖夢から罵られる
俺は申し訳ない気持ちになりながら部屋を後にした




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