名前:西行寺 幽々子

189面ボス   (8でショートカット説明書)

餌を与える

風呂場には流石に何もないか…
出口までの道中に風呂があったため覗いてみたが、そこには何もなかった
浴槽にお湯が張ってあるだけだ
念のためお湯の中も見てみるが何もない
肩透かしを食らったような気分で俺は風呂場を後にする



風呂場の扉を開けようとしたところで、背後に気配を感じた
振り向くと、先程まで誰もいなかったはずの浴槽に誰かがいる
ゾンビフェアリーの光は強くないのでよく見えないが、あれはどこかで見たような…

俺は迷ったが、それを確認することにした
徐々に浴槽に近付いていく
間もなく浴槽というところで、俺はその正体に気付いた
それは人間の骨だった
骨が宙を浮きながらこちらを見ている


この骨は魂を求めている
魂が入れば蘇ると思っているのさ
哀れだね




骨の下から女性が浮かぶ
骨の存在が強過ぎて気付かなかったのか
俺は女性の存在に驚いた


あんたもそう思うだろう?
だからさ…
あんたの魂をこいつにくれてやんなよ
そうすればこいつも満足する


女性はそれを言い終えると、手にしていた鎌をゆっくりと振りかぶる
そして、振りかぶる時とは段違いの速度で、一気に俺の喉元目掛けて鎌を振った
その間、俺はただその動作を見ているだけだった…




何で無反応かねえ
あたいが本気だったら今頃赤い噴水が出来てるよ


小町が呆れた口調で俺に言う

それにしても、あんたが怖がる側で入ってくるなんてね
映姫様の旦那と一緒に住んでるんだし、てっきりあんたも怖がらせる側だと思っていたよ
怖がってくれたかい?


先程までの表情がまるで嘘であったかのように、あっけらかんとした声で小町が尋ねてくる
俺は小町に感想を言いつつも、肩にある骨を気にしていた
どう見ても浮いている…というより、動いている気がするのだが
小道具にしてはよく出来ている


ああ、こいつかい?
こいつは私の同僚さ
と言っても仕事が違うけどね
あたいは幻想郷担当
こいつは…しゃどうなんとかとかいうところの担当さ
死にたがりな勇者がいて忙しいところを、私が無理を言って引っ張ってきたんだ
わざわざ来てくれたんだから感謝しなよ


紹介された骨はこちらを向いて笑って…いるのだろうか?
骨であるため全然表情が読み取れない
俺が感謝をするのはおかしい気もするが、取り敢えず骨に感謝の言葉を伝えた


…小町

ん?
あれ、誰かと思えば映姫様じゃないですか
旦那と一緒じゃなかったんですか?


ええ、そうしたいのは山々なのですけれどね
出てきた方から妙な話を聞いたので見に来たのですよ
何でも、「浴槽の骨が怖かった」と
浴槽には何も配置していないにも関わらず、です
さて…真面目な同僚まで巻き込んで、何故貴女はここにいるのですか?


え…いやーそのー…
お盆は忙しいじゃないですか
だからお盆前に休んで仕事に対する活力を今のうちに養っておこうと
そしたらお化け屋敷なんていう面白そうなものがあったから…


…そういえば最近うちも金銭面が厳しくてですね
給与を減らすとか異動をさせるとかという話がちらほら出ているのですよ
丁度良い機会ですし、貴方も彼と同じ場所に移動させましょうか
死にたがりな勇者のいるあの場所なら、人手が足りていないでしょうし
貴方も同僚と一緒であれば何の心配もないでしょう?


ちょ、ちょっと待ってください!
あたいはここが良いんです!
大好きな映姫様と一緒に働きたいんですよ!


それでは私は戻って書類を作成してきます

駄目だ効かない!
…じゃなくて映姫様、お慈悲をー!


きっと小町の考えとしては、「大好き」のフレーズで映姫を戸惑わせ、その隙を突いてうやむやにしてしまおうとことだったのだろう
結果は生憎だが
取り残された俺とゾンビフェアリー、そして骨は、それぞれの顔を見合わせた後それぞれの場所へと戻っていった




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