逃げるとはいえここは宴会の席。狭い道を二人で抜けるのだから思ったよりも速度が出ない。それにただ転んだだけの映姫はすぐに起き上がるとズンズンとこちらに迫って来たのだ。
それでも俺は美鈴の手を引いて前へ前へと突き進む。だが、このままでは捕まるのは時間の問題。
貴方「不当な裁きは絶対に受けさせない!」
いよいよ腕を伸ばせば捕まってしまうまでに追い詰められた俺は、美鈴を庇うようにズイと前に出ると、真っ直ぐ酔いどれ閻魔を睨みつける。だがそんなもので彼女が怯むはずもなく、こちらを捕縛せんと腕を伸ばしてきた。もはやこれまでか……。
いや、俺の体は高く跳躍した。俺の意思とは関係なく。いったい何が起きたのかと、周囲を見渡すと、なんと美鈴が俺を抱きかかえて大ジャンプをしていたのが分かった。
映姫「二人とも黒です! 降りてきなさいっ!」
手にしていた棒状の道具を(確か罪の数だけ叩く的なアイテムだった筈)象った弾をこちらめがけて数発飛ばしてきた。ブンとうなりをあげて撃ち込まれた弾。対応できない……!
美鈴「はいっ、はいっ、はいーっ!」
それらを拳や脚技で弾き飛ばしていく。俺は美鈴のことを居眠り癖のある呑気な門番くらいにしか認識していなかったが、その考えは改めるべきであるとひしひしと感じた。頼もしいし、何よりもカッコイイ!
全ての弾を迎撃すると再び俺を抱きかかえてまるで忍者のように跳躍しながら閻魔から逃げ切った。
気づくと宴会会場を少し離れてしまったが、ほとぼりが冷めるまでここで身を潜めておこう。まともにジャッジできていない閻魔様のことだ、じきに俺たちのことなど忘れて他の奴の説教に入るだろう。ちゃんと回らない呂律で。
大きめの木がデンと1本だけ立っており、ゼエゼエと息の上がっていた俺達はそこで息を整えることにした。どういうわけか美鈴は俺を抱っこしたままで。後頭部に柔らかくて大きいのが当たってるんですけど……///
俺はそのことを注意してその両腕から離れようとしたが、その腕がわずかに震えていることに気が付いた。本調子ではなかったとはいえ、相手は門番などよりもずっと格上の相手。恐怖するのも無理はない。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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